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【職業教育コラム(宮田雅之⑤)】教育理念と建築 ~新渡戸稲造とヴォーリズ建築~

更新日:1 日前


建築は単なる物理的背景にとどまらず、教育理念を体現し、教育内容を支える媒体になり得る。建築を学びの環境と捉えると、建築そのものが「もう一人の教師」となり、理念を形にし、学び方を方向づける役割を担っていると解釈できよう。


建築と教育の関わりは、以下の大きく3つの視点で整理できるのではないだろうか。

  1. 価値の翻訳(理念を形に): 学校が大切にする価値(人格・実学・協働・開放性など)を、素材・光・動線・象徴の形で「見える化」する。

  2. 行動の設計(学び方を誘発): 平面計画・家具・スケール・音環境が、自然発生的な行動(立ち話、共同編集、集中、発表)を誘う。

  3. 教材化(空間そのものが学習資源): 構造・素材・設備・展示の仕組みを「触れて学べる教材」にする。


福澤諭吉が創立した慶應義塾(東京都港区)の図書館。曾禰中條建築事務所が設計し1912年に竣工した西洋式レンガ造建築。福澤は「学問のすすめ」で「実学」を説き、封建的な身分制度に代わる「文明開化」を志向した人物。瀟洒で華麗なゴシック建築の採用自体が「実学」「開化」の象徴であり、まさに建築を通じて「目に見える近代化教育」を体現していたと言えよう。


自由学園(東京都豊島区)の明日館も紹介したい。フランク・ロイド・ライトが設計し1922年に竣工。羽仁もと子・吉一夫妻が「生活即教育」を教育理念に掲げた同学園にとって、建築は「生活教育の道具」そのものであったと言えよう。光と水平線を強調したプレーリー様式が、親しみやすさと共に、学ぶ者の日常性を包み込むような空間を構成している。


そして、新渡戸稲造が初代校長を務めた新渡戸文化学園(東京都中野区)の新渡戸記念館。ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計し、1937年に竣工。勾配が緩やかで木製手すりの大階段が建物の中央に配置されている。木の温もり・自然光・人と人が出会う回廊を重視した設計は、「人格教育」を空間化したひとつの実例と言えよう。




【参考】新渡戸文化短期大学 キャンパスブログ



一般社団法人職業教育研究開発推進機構

代表理事補佐 宮田雅之






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