【職業教育コラム(宮田雅之④)】新渡戸稲造の「実学」に欠かせない「人間性」を育むには
- 宮田 雅之(Masayuki Miyata)

- 2025年9月27日
- 読了時間: 2分
新渡戸稲造は、「実学」とは「技術を身につけるだけでなく、その人の『人間性』を養うもの」であると唱えている。高い『人間性』を備えることによって、周りからの尊敬を集め、良好な人間関係が構築され、物事が円滑に進んで行くであろう。さらに『人間性』を慕う同志が集まれば、集団のパワーにより、組織や社会に影響を与えることも可能となろう。
そもそも『人間性』とは何なのか。現代においては、「他者を思いやり、社会の中でよく生きる力」として語られることが多い。具体的には、下記のような力や態度を持ち合わせた人物を「『人間性』が豊か」と捉える向きが多いのではないだろうか。
(1)共感力(相手の気持ちを感じ取る力)
(2)倫理性(自分や他人を尊重する態度)
(3)自己実現力(個性を生かしながら成長する力)
そして、このような力や態度を身に付けている人は、まさに「しごでき(仕事ができる)」であることに気が付く。
当機構の代表理事である川廷宗之は、「仕事ができる人を育成するにはどうしたら良いのか?」という問いに次のように答えている。「座学による知識の詰め込みだけでは実現できない。実践を伴う学修を積み重ねることによってこそ、身に付けることができる。経験によって人は成長することができるのである。」
つまり、経験の積み重ねこそが、『人間性』を磨く有効な方法であるとの仮説が導かれる。座学で知識を習得することができても、「身に染みる」「腹に落ちる」「確信する」「行動につながる」という領域に到達するには経験というプロセスが欠かせない。最近SNS上の書き込みで、『人間性』に優れている人物を「〇〇さんは人生を5周している」と表現している文章が目に留まった。『人間性』と人生経験の相関関係を的確に表現している。
では、座学には意味がないのか。より効果的な経験を積むには、座学を通して得た基礎知識が大いに役立つ側面を忘れてはならない。筆者は小学校の修学旅行で鎌倉を訪れたが、由比ガ浜で見た光景を今でも鮮明に覚えている。鎌倉時代の歴史を事前に座学で学んでいたからこそ、当時の武士に想いを馳せることが出来、感動的な経験として深く記憶に残っている。

一般社団法人職業教育研究開発推進機構
代表理事補佐 宮田雅之